それを変化させたのは以前NHKのドキュメンタリー番組(確かプロフェッショナル-仕事の流儀だったと思います)の中で、宮崎駿氏が

「気持ちで映画を作っちゃいけない」

と仰っていた。・・・その言葉の真意を知りたかったからだと思います。

ではジブリ版ゲド戦記の感想はどうだったか。まず、物語として平板だったと思います。原作を読んでいなければ意味不明な箇所も散見し、ゲド戦記を名乗りながらアレンの物語でした。少なくとも、劇場で観るほどのモノでは無かったと思います。原作者のル=グウィンの「わたしたちの心の闇は、魔法の剣の一振りで追い払えるようなものではないのです。」という言葉が示唆的でしょう。・・・それなら宮崎吾郎氏は監督業をすべきでは無いのでしょうか。僕は必ずしもそうは思いません。

宮崎駿氏の何十年かの経験であるとか、ル=グウィンが長い時間を掛けて緻密に築き上げてきたアースシーの物語を映画1本に期待することがそもそもの誤りであると、僕は理解しています。それに、宮崎駿氏が否定したもの、「竜と向き合う」シーンを、僕はとても美しいと思ったんですよ。別に作画とか技術的な話ではなくて、ある種の絵画を前にしたときに魂ごと揺さぶられるような感覚と評したいです。下らない計算とか、様々な現実的な確執とかを超えた部分で、あのシーンには僕にとって揺さぶられるものがあったと思います。

でも吾郎監督には、「感性駆動」とでもいう感じで物語を組み上げて欲しいですけどね(謎)。そんなことを考えていました。宮崎駿氏の代わりは、誰にも務まりません。それは確かです。そして、宮崎吾郎監督がどういう監督になるのかは一作だけでは分かりません。僕はそれも確かだと思っています。



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